犬棒辞典2

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希死念慮[きしねんりょ]=自殺願望』

うつ状態はたしかにたいへんつらいものであるが、それだけではこの希死念慮は説明しきれない。しかも、この考えにとりつかれてしまった人が実際に行動を起こすのは、本来のうつ状態が快方に向かい始めたときが多いと言われている。苦しいトンネルを抜けてやっと光が見えてきて家族や主治医もほっとしたときに、彼らは静かに、しかし確実な方法で死を選ぶことがある。

「“かぎりなく他殺に近い自殺”  香山リカ」死をめぐる50章 から

『寓目[ぐうもく]=目にとめる、目をつける』

一昨年(一九七一年)の本誌十二月号であった。やはりこの欄で、この言葉について書いたことがある。以来この一文ほど、読者諸氏から多数の反響をお寄せいただいたものはない。結論は、げんざいもなおよくわからぬにつきるのだが、その後淮陰子自身新しく寓目した文章もあり、またそれら反響から示された新解釈もあるので、いま一度取り上げてみる。

「小股の切れ上った女/小股の切れ上った女、再考 - 淮陰生[わいいんせい]」日本の名随筆別巻74辞書 から

寸鉄人を刺す=短く鋭い言葉で急所を突く』

淮陰生(わいいんせい)

生年不詳

左記の書は、一九七〇年一月から八十五年一月まで、「一月一話」「続一月一話」と題して「図書」誌に連載された文章を一冊にまとめたもの。題は蜀山人大田南畝の『一話一言』のひそみに倣い、筆名は漢の武将・韓信の別称・淮陰候に由来するという。文章は軽妙酒脱、時に寸鉄人をさす。かなりの手練れと思われるが、その正体をめぐって、当時から反響を呼んだ。

日本の名随筆別巻74辞書 から

『捨象[しやしよう]=考えのうちから捨て去ること』

「磁気定期券を下車駅の自動改札機に投入した場合、自動改札機は、同磁気定期券の券面に記載された区間内から乗車したことを前提として出場の可否を判断する〔との検察官の主張は、〕個別具体的な事務処理の内容を捨象した解釈〔であり、同罪の〕外縁をおよそ不明確にし、処罰の範囲を不当に拡大するおそれがあるものというほかなく、採用し得ない。

刑法-「鉄道のキセル乗車と電子計算機使用詐欺罪の限界 ー 東京大学教授 和田俊憲」法学教室 2020年9月号 判例セレクト から

『 常住坐臥[じょうじゅうざが] =普段の生活』

死はいまや常住坐臥[じょうじゅうざが]のうちに感じられる、なんてわかったようなことをいうつもりはないが、自分の歌の中にも、文章の中にも、ほんのりと死が匂って来ているのはたしかだ。これはあくまで自然に、わたしの予想をこえて、しのび込んで来ている感覚的なもので、「おもふ」対象ではない。

「ほんのりと匂うもの - 岡井隆」ベスト・エッセイ2006から

『実践躬行[じつせんきゆうこう]=実際に自分でやってみる』

私は当時「正直」の二字を理想として、俯仰天地に愧[は]ぢざる生活をしたいといふ考へを有[も]つてゐた。この「正直」なる思想は露文学から養はれた点もあるが、もつと大関係のあるのは、私が受けた儒教の感化である。話は少し以前に遡るが、私は帝国主義[インペリアリズム]の感化を受けたと同時に、儒教の感化をも余程蒙[こうむ]つた。だから一方に於ては、孔子の実践躬行[じつせんきゆうこう]といふ思想がなかなか深く頭に入つてゐる。

「予が半生の懺悔 - 二葉亭四迷」お金本 から

『天稟[てんぴん]=生まれついての才能』

『乙夜[いつや]の覧=読書の大切さ』

《思うに、私など、なまけ者で、天稟[てんぴん]というやつを与えられていなう凡夫だから、絶えず、かたわらに、書物を置いていないと、不安でしかたがないのである。これは、あきらかに、凡夫の劣等感であって、乙夜[いつや]の覧などとは、全く趣きを異にするのである。》

「十読は一写に如かず - 柴田錬三郎柴田錬三郎選集18随筆エッセイ集 から