(巻三十)あぢさいのもう欺けぬ終のいろ(谷本元子)

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(巻三十)あぢさいのもう欺けぬ終のいろ(谷本元子)

 

8月3日火曜日

 

区役所から熱中症への注意を呼び掛けるメールが届いた。そんな中を毛布をクリーニング屋さんに持ち込む。三枚で2640円也り。ついでに生協で買い物を致す。豚もも薄切り、ほうれん草、豆腐、ヨーグルト、牛乳、納豆と買い、草餅を一つ頂く。納豆はお亀納豆50グラムプラスチック容器三段重ねを買っていたが、小ぶりの茶碗に50グラムではちょっと多すぎた。今日は生協の紙容器30グラム4個セットに変えてみた。プラスチック容器から紙容器への転換も図れる。ヨーグルトは既にプラスチック容器のものから紙容器に変えている。

こんなことで地球が何年生き延びるのか知ったことではないが、暑い。

もう誰もいない地球に望の月(山崎十生)

夕方散歩、今日の句のような紫陽花が残っているはずだと、その路地を先ず歩いた。紫陽花とか向日葵は終が惨めだなあ。チューリップも哀れだ。フラリと生きてハラリと散るのがよろしい。

無惨なら枯向日葵に劣らざる(中原道夫)

今日は親水公園のLawsonでアジフライで路酎いたし、四千八百歩で階段は3回でした。

願い事-叶えてください。ハラリと終わりたい。

8月4日は風天忌だそうだ。

はえたたき握つた馬鹿のひとりごと(渥美清)

 

> 「幽霊の正体 - 団鬼六講談社 快楽王団鬼六 から

>

> 当時(昭和四十九年頃)、月に一度か二度ぐらい、幽霊見舞いという名目で、目黒の鬼プロ事務所に夜になってから遊びに来ていた渥美清は、近所の人達が引き上げたあと、ぽつりと私にいった。

> 「こうして賑やかに怪談千一夜をやっていると、幽霊の方だって気恥ずかしくて出てこられないんじゃないかな。僕だって一度ぐらいその噂の美人幽霊というものにお眼にかかってみたいもんだ」

> というから、

> 「来週の土曜日の丑[うし]三つ時、ここへ来てくれたら渥美さんだけにはこっそり呼び出して紹介するよ」

> と私がいうと、彼は喜んで、何とか都合をつけて出てくるよ、といったが、すぐにギョッとした顔つきになり、眼をパチパチさせて私を見た。

> 「その時、幽霊を呼び出すって、ほんとに出来るの?」

> 渥美さんはSMには大して興味を示さなかったが、幽霊の存在を信じ、興味を示す方だった。しかし、私が自在に幽霊を呼び寄せる事が出来る超能力者であるとは信じられないようである。

> 私は笑って、その幽霊の正体を渥美さんにばらした。

> 白いブラウスに黒のスカートという女の幽霊の正体は私が社員の大谷の斡旋で獲得した愛人・吉田敏江だった。女子大生の幽霊が出るという噂が立ったものだから、夜中に私の家へこっそり出入りするようになった吉田敏江に、幽霊の目撃者が語る白いブラウスに黒のスカートで衣装を統一させていたのである。だから寿司屋の出前持ちが見て、近所に吹聴して廻った幽霊の正体も吉田敏江であった。

> 世間体から見ても、夜中に女が出没するより幽霊に出没される方が何となく恰好[かつこう]がいいと私なりに考えたのである。

> 「そういうからくりがあったのか。あんたもなかなか隅に置けない人だね」

> といっと渥美さんは笑った。

>

>

> 当時、谷幹一関敬六達と一緒に遊びに来ていた渥美さんには、人生相談に乗ってもらった事が幾度もあった。

> 私は酒が入ると、当時の自分の心境を愚痴っぽく渥美さんにこぼした事があった。それは元々、舞台の演出家志望であったのが生活のために田舎中学の英語教員になり、インチキ英語を駆使しテレビ洋画の翻訳部に入社し、次にピンク映画のシナリオライター、自分の好色加減を再確認して次にSM作家となり、それだけでは飽き足らず、性倒錯者達を対象にしたSM雑誌を発刊するにまで至った自分の略歴を彼に語って、そんな自分に最近、コンプレックスを抱くようになったといった。

> 「女房なんか、どうしてあなた、文学をやらないの、と私を小馬鹿にしているようなんです」

> と、私が愚痴っぽく語ると、渥美さんは笑って、

> 「文学作品とか芸術作品といったものは別にあなたがやらなくたって、この世にやる人はワンサといますよ」

> というのだった。

> あなたが文学小説を書いたって恐らく売れないでしょう。しかし、SM小説を書いたら売れるという事ははっきりしてます。それなら、ためらわず売れるSM小説に徹すべきだと思いますね、と渥美さんはいった。

> 「正直いって、僕だって寅さん映画が売れるから次から次に出演しているんです。そんな役者でいいのかと自分で疑問を持った事は何度もあります。自分の可能性を自分が狭[せば]めているんじゃないかと思いました。しかし、役者とは大衆に支持されるものなら、どんどん出演すべきだと思います。大衆に悦ばれ、支持されるものに出演するという事、これは役者冥利に尽きるものです」

> 目黒のお化け屋敷で渥美さんに、自分が好む、好まないにかかわらず、お客が悦んでくれる限り、SMものをどんどん書け、と意見された言葉は、今でもはっきりと耳の底に残っている。