(巻三十五)公園の枯葉のためのベンチかな(鈴木貴念子)

(巻三十五)公園の枯葉のためのベンチかな(鈴木貴念子)

1月8日日曜日

駄句を捻り始めた平成二十六年の暮れに、

考えて今宵の鍋を定めけり

と捻った。今朝、寝床の中で、ふと、“考えて”を“吟味して”にした方がよいのではないかと浮かんだ。句帳を赤ペンで“吟味して”に直し、データやブログも直せるところは直しておくことにした。まっ、どうでもいいことだが。

目覚めいて布団の中の小半時(安藤久美子)

朝家事は洗濯と布団干し。ラジオがうるさいと言ったらこっちに来るなとの反応だ。ありがたく自室に籠る。

聞たくも無きこと聞え耳袋(加古宗也)

俳壇を届けてくれた。

突き出しの煮凝りに入る目玉かな(をがはまなぶ)

地味に生き派手に句作を去年今年(斎藤紀子)

マフラーのまま焼肉を裏返す(竹内宗一郎)

を書き留めた。

昼飯喰って、一息入れて、散歩に出かけた。お願いした本が届いていると連絡があったので図書館に寄り写真の5冊を借りた。今回は明らかなハズレはないようだ。図書館から稲荷へ回ったがコンちゃんは満腹のようで無愛想。店仕舞いした小松肉屋の前の郵便ポストに駄句を投函した。週に一句を投じてみよう。そこから都住に入り2号棟の階段脇で日向ぼこをしていたサンちゃんにスナックをあげた。1号棟の階段脇に移りクロちゃんを呼び出してスナックをあげているところにフジちゃんが出現す。クロちゃんは本当に痛い目にあわされたことがあるようで一目散で逃げてしまった。猫の社会も強弱で厳しい生活をしているようだ。人間に限らず生き物ってえのは嫌なものだ。

生協に寄り福豆と菓子パンを買って帰宅。洗濯物を取り込み、シャツにアイロン掛けをした。

願い事-涅槃寂滅です。酔生夢死です。急性腎不全です。

今日借りてきた5冊の図書を捲り熟読する作品に目星を付けました。恥ずかしながら申し上げますが、有栖川有栖という作家は女性だと思っていました。《「山陰本線びいき - 有栖川有栖交通新聞社刊旅の宝石箱から》を読んだときには女性作家の鉄ちゃんとは珍しい⁉と思ったものです。その有栖川さんのエッセイ集『正しく時代に遅れるために』の中からは、「わが町、上町台地」という小品を読んでみる。菊地成孔氏の『菊地成孔追悼文集』からは「浅川マキ逝去」を読んでみる。団鬼六氏の『自伝エッセイ-死んでたまるか』からは「透析拒否」を読んでみる。林望氏の『私は女になりたい』からは「ワイセツなんて……」を読んでみる。そして一番しっかりと読むつもりなのが加賀乙彦氏の『犯罪ノート』の中の「無期徒刑囚としての現代人」だ。

死ぬのはいや蟻がむらがる蝶を見て(死刑囚某)

山陰本線びいき - 有栖川有栖交通新聞社刊旅の宝石箱から

鈍行列車に乗り、車窓風景をぼんやり眺めながらどこまでも運ばれて行くような旅が好きだ。

駅に停まるたびに周辺をきょろきょろ見渡し、少しずつ入れ替わっていく乗客たちの会話の断片が耳に入ってくるのを味わう。

そうしていると、とても贅沢な時間の使い方をしているように感じる。

鉄道旅行の楽しさに目覚めて、大学時代からあちらこちらに一人旅をした。本線から分岐したローカル線の終点まで行って引き返すのをよくやったが、何時間も同じ列車に揺られ続けるのも大好きだった。

最高だなぁ、思ったのが山陰本線。大学のサークルの仲間と夏休みに萩・津和野方面を旅した際、萩から下関まで各停で移動したのだけれど、車窓を流れゆく日本海や白砂青松を愛でながら、みんな声を揃えて「ええなぁ」と顔をほころばせたものだ。一つずつ順に現れては駅名標も恰好の話のネタで、「次の駅は〈こっとい〉か。どんな字を書くんやろう?」「ええっ、〈特牛〉。これは判らんわ!」などと盛り上がった。

一人旅で山陰を巡ったのはその何年後かの春、のどかな季節で、駅で停まるとヒバリの声がよく聞こえた。単線だから上りと下りが行き違うための時間待ちが多く、時には30分近くも列車は動かない。それならば、と駅員さんに断わって改札口を抜け、駅の近くを散歩することもできた。

すっかり山陰本線のファンになった私が、できるものなら乗ってみたい、と思ったのが往年の824列車である。ディーゼル機関車か牽引する客車列車で、門司駅を午前五時半より前に出発し、18時間半ほどかけて福知山駅に着くという普通列車だ。

夜明け前から日付が変わる少し前まで走り続けても京都駅に着かないねだから、浮世離れした旅ができたに違いない。いつか乗り通してみたい、と思っているうちになくなってしまった。あれならば山陰本線を(端から端までではないが)丸かぶりできたのに。

山陰本線の魅力はたくさんある。ずっと海に沿って走るわけではないが、区間によっては海岸線をなぞり、紺碧の海と大小様々な岬を見せてくれる。保津峡余部鉄橋、大山、宍道湖......と素晴らしいヴュー・ポイントが沿線には散らばっているし、城崎、鳥取、米子、松江、出雲、石見、萩など観光に訪れたい町や温泉も多い。それに加えて、乗っても乗っても終わらないほど長大なのがいい。

現在、新幹線を除いて日本で一番長い路線は山陰本線だということを最近知った。東北本線には負けるだろう、と思ったのだが、あちらは新幹線の延伸によって第三セクター化した区間があるため、JRの路線としては縮んでしまったのだとか。それを聞いて、山陰本線のありがたみが増した気がする。

山陰本線びいきの私だが、あまりに長いのでまだ乗っていない区間がかなりある。大好物を惜しみながら食べるように、何度かに分けて乗るつもりだ。

と思っていたら、JR西日本が2017年から営業運転の開始を予定している豪華列車〈トワイライトエクスプレス瑞風[みずかぜ]〉が山陰本線を走ると知り、大喜びしている。

「おや、あなたは鈍行列車が好きなんじゃないのか?」と言われてしまいそうだが、誰だって乗りたいでしょう、〈瑞風〉。大阪・京都駅を出て下関駅をめざすコースならば、車中で一泊しながら山陰本線を走破できるようだ。ずーっと山陰本線の線路の上にいられるではないか。

思ってもみなかった列車がデビューすることにわくわくしているが、それはそれとして、鈍行に乗っての山陰本線の全区間走破もいつか成し遂げたい。〈瑞風〉に乗っただけでは、夜中に通る区間の風景を見逃してしまう。

こんな調子だから、私は一生、山陰本線を楽しめそうだ。