(巻九)集団で餓死すと聞けば憎らしきカラスもあわれ生のかなしさ(斎藤哲哉)

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11月12日木曜日

いよいよ、入院が近づいてきた。
もしものことを思い、
何かやっておきたいことや、食べておきたいものを考えてみた。

ないのですよ。

行年に見残す夢もなかりけり(永井荷風)

未練を残して死にたくはないので心の死支度と思ったが、そもそも思い残すことも無いようだ。

死支度致せ致せと桜かな(小林一茶)

死は怖い、だから死にたくはない。怖いから死にたくない。それ以外がない。

死ぬのはいや蟻がむらがる蝶をみて(死刑囚某)

凡夫にやり残した仕事などあるはずもないし、

春風や凡夫の墓の御影石(岸本尚毅)

もし告知をいただいても、メールを差し上げてご挨拶する方々も僅かです。

初七日の席順までも書き残した余命告知の兄を想いむ(及川泰子)

死ぬ前に、どうしても、会っておきたいと言う人もいない。

消息を知りたくもあり紙魚のあと(渡辺寿美)

こう振り替えってみると、本当に居ても居なくてよかった存在だったなあ。

涼風に晒して残る薄き自我(北原喜美恵)

眼前の細やかな幸せを味わい(写真)、以て由としょう。