11月12日木曜日
いよいよ、入院が近づいてきた。
もしものことを思い、
何かやっておきたいことや、食べておきたいものを考えてみた。
ないのですよ。
行年に見残す夢もなかりけり(永井荷風)
未練を残して死にたくはないので心の死支度と思ったが、そもそも思い残すことも無いようだ。
死支度致せ致せと桜かな(小林一茶)
死は怖い、だから死にたくはない。怖いから死にたくない。それ以外がない。
死ぬのはいや蟻がむらがる蝶をみて(死刑囚某)
凡夫にやり残した仕事などあるはずもないし、
春風や凡夫の墓の御影石(岸本尚毅)
もし告知をいただいても、メールを差し上げてご挨拶する方々も僅かです。
初七日の席順までも書き残した余命告知の兄を想いむ(及川泰子)
死ぬ前に、どうしても、会っておきたいと言う人もいない。
消息を知りたくもあり紙魚のあと(渡辺寿美)
こう振り替えってみると、本当に居ても居なくてよかった存在だったなあ。
涼風に晒して残る薄き自我(北原喜美恵)
眼前の細やかな幸せを味わい(写真)、以て由としょう。