(巻九)菜の花のどこに咲いてもさびしからず(飯塚柚花)

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12月7日月曜日

有楽町駅前の銀杏が黄落をやっと始めた。桜の葉の紅葉から2ヶ月以上経っている。
それぞれの樹によってちがうのだと、この歳になって分かった。

黄落の果てて一樹に戻りけり(三宅久美子)

冬本番となり、あまり関係はないのであるが、三十歳になる女性の失恋話を耳にした。
彼女の二十歳代後半を“捧げた”彼氏は細やかながらも事業を営んでいるそうである。その彼氏から「事業がはかばかしくなく、結婚に踏み切れない。これ以上は引き延ばしていることもできないから、諦めて欲しい。」と言ってきた、というのが粗筋のようである。

かわせみに杭置きりにされにけり(八木林之助)

自分の仕事をこなしたうえで彼氏の仕事を手伝い、尽くしていたようであるから、熱の上げ方は彼女が八分で彼氏が二分と言ったところか。

思ふ人の側へ割り込む炬燵かな(小林一茶)

彼氏も彼女もカッコいい容貌であり、経済的な不安定さにおいてもドッコイドッコイであったから、まあ破れ鍋に閉じ蓋といったところであり、彼女に手鍋提げてもという覚悟があれば、成就もできたであろうに?

秋風や模様の違ふ皿二つ(原石てい)

否、恋愛の鉄則である「追えば逃げる」であったのかもしれない。

細君に逃げられたりと暗く告ぐ逃がしてやつたと思ひたまへよ(島田修三)