(巻九)草餅の堂々として田舎ぶり(上村敏夫)

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1月6日水曜日

電通大の哲学の元教授である中島義道氏の「私の嫌いな10の人びと」ー新潮文庫(税別430円)ーを年末年始用に仕入れ、一読を了えた。
題名と価格に釣られて買ってみたが、途中でゴミ箱に投げ込みたくなるほどの駄本ではない。
電通大・哲学?と思って買ったのだが、その事についても先生は本の中で一、二頁述べておられる。
「10の人びと」とは、
1、笑顔の絶えない人

2、常に感謝の気持ちを忘れない人
3、みんなの喜ぶ顔がみたい人
4、いつも前向きに生きている人
5、自分の仕事に「誇り」を持っている人
6、「けじめ」を大切にする人
7、喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
8、物事をはっきり言わない人
9、「おれ、バカだから」と言う人
10、「わが人生に悔いはない」と思っている人

だそうだ。
そして、この10をチャプターとして、体験談風に意見を展開している。
一般的には美徳とされているものを、先生はこき下ろしています。

私は勝手に234頁に本意が記されていると読んでいます。
因習とか慣習を考えもせずに受け入れて、世間に迎合することで楽で怠惰な生活を送り、この楽で怠惰な生活を守るために因習・慣習を振りかざす輩は嫌いだ、ということでしょうか。

読んでいて、ビートたけしさんの週刊誌コラムに似ているな、との感想も持ちました。
「娼婦を抱いておいて、娼婦を軽蔑する」的なお話もありますが、哲学者先生は「娼婦を抱いておいて、娼婦を軽蔑する」的な議論をするご自身を173頁辺りで「卑怯者の不道徳漢」と言っていただいて結構と述べておりますので、開き直っているようです。

世間、組織、家庭などの社会、小社会に煩わしさを覚えている方は読んでみてもいいでしょうが、解決にはならないと思います。解決策は述べられていますが、危険です。

ぼうふらやつくづく我の人嫌ひ(田中裕明)

随筆や評論に俳句や短歌が引用若しくは紹介されることが多々ありますが、先生は一首だけ載せておりました。

やは肌のあつき血汐に触れも見で さびしからずや道を説く君(与謝野晶子)