『古希七十句 令和四年十一月増補版』

 

『古希七十句 令和四年十一月増補版』

現世のお蔭参りか南瓜祭
柿仰ぐ色鮮やかで喰えぬ奴
秋深し蜜柑の甘くなりにけり
天高く輪乗りの小馬の目の回る
生き方を猫に教わる秋日和
BBC耳順はぬ夜長かな
やや足りず二割負担で古希の秋
世につれて的屋老ひけり秋祭り

令和四年古希

夕焼やエンドロールは短めに
送り火や斜めに構え四回目
蜘蛛の子を逃がす爺の下心
猛暑日やハテナハテナとミミズの死
心配の種を飛ばして西瓜食ふ
二回戦出来た半分夏終わる
春愁やドーパミンよりセロトニン
見納めでいいと思いつ見るさくら
転がつて虚空をつかみ山笑う
長閑さやそちらの雪の気にかかり
ニュースなきラジオに合わせ冬籠り
願うこと生死直結古稀の春

令和三年

一年の計の結果のただ寒し
小吏なるロバにも御用納めかな
金給わり銭を遣いて年詰まる
点滴を逆流させて神の留守
秋の暮時が許さぬ小商い
だんだんと暗く成り行く敬老日
台風や土手を信じて水の底
自己嫌悪影もつくらず木下闇
生物は蔓延りたがり黴生える
リハビリテーション病院で予約を済ませ五月尽
荷風忌やお一人様として帰心
啄木忌始発少なし上野駅
長閑さや下校のチャリの横並び
大寒や野菜売場に無季の彩
枯れ枝に何か訳ある葉が二枚
御言葉に迷う古羊冬帽子
保育士の目も遊ばせて冬日
添え書きのなき賀状きて三四枚
手短に手短願う初詣

令和二年

現世に強き妻いて懐手
在宅のたまに出ていく歳の暮
血圧の上がる寒さとなりにけり
天高く寺の掲示や出来不出来
読書妻君の偏差値十高し
鶏頭に脳みる脳の朧かな
鳴く虫や泣いて出てきた道化の世
灼けかたの違ふ野球部蹴球部
世の中は回つているか今年米
願い事眠るが如く星今宵
給付金打ち出して見る半夏生
死たがる句ばかり詠みて桜桃忌
起承転結生老病死梅雨深し
新緑や半径二キロに棲息す
肉マンを二つ列べて四月馬鹿
小春日や足許からの薄き影
仕事なく仕事初めもなかりけり
初夢の好色にして恙無し
あの世などあつてたまるか仏の座

令和元年

桜島見しが今年の一大事
ボロ市や賢母膝つき品定め
舞い降りて一日二日は彩落ち葉
影像を読み解く医師やそぞろ寒
立冬や寝起きの悪き妻である
黄落や散りぎわばかり見るさくら
電飾を取り付く小枝あやまたず
初孫の祝い返しや芋と柿
担ぎ手の腹の出ている秋祭り

平成三十一年

子のブログ見て就職を確かむる
憂いなく今が死に時ちゃんちゃんこ
母親は捨てられる女春寒し
鍋焼きや舌で転がすトッピング
菜の花や喰われる前に咲きにけり
本年は酒で潰さぬ暇潰し
積み上げて取り崩さずに寒卵

平成三十年

転職も二度目は慣れて晦日そば
冬来たりなば春とはシェリーかな
歳晩や旧社に掛ける里心
手探りのボタンダウンや穴惑い
年金手帳夫婦で捜す五月闇
ハナミズキ姉妹の茶話の余り菓子
初物や懐具合の冷奴
いいことは探せば出る種袋
ハンコウも一つに纏め老いの春
噴水や枯れ野の末に勃起せり
寒々と尿の色に黄泉の国
営業の出ていく巷に雪が降る
生足も凍る掟か女子高生
匿まわる団地の犬の息白し
働いてあと五年はと年初め

平成二十九年

働けて減額支給や大手締め
着膨れや乗らんと体を斜に構え
追い焚きをするならしなよしてごらん
幸せと思えと言わる椿カフェ
しぐるるやいけるとこまで多作多捨
一キロを十個に分けし神無月
骨軽し壺は重たし秋の空
秋風や孫たちの居て家族葬
死なざれば受給資格や小鳥来る
蝉啼くやハウスバイバイ判二つ
売家の穂を垂る草をむしりけり
団地とは函と内箱桜散る
見下ろせば団地に隣る桜道
春愁や覚悟を迫る顔の紙魚
懐の肉まん食わぬ梶思う
着膨れて彼方に弛みし靴の紐
受験子やちからになれぬ父連れて
コーラクや今年は煮込みと二合まで
あつけなき転結願い初参り

平成二十八年

冬の路地荷風になつたつもり酒
雪だるま近所にいまだ子がいたり
案外の実を結びけり庭みかん
柏そごついに閉店九月果つ
マジックの消えてラジオの変声
紅顔の少年さんまほろ苦し
細胞や小春日和のビラ配り
開いたと君白梅を指しにけり
色夢におもちゃ手すさぶ寒の床
一駅で桃黒となり寒夕焼

平成二十七年

秋の暮文句は言えぬ五人扶持
遠雷や帰りを急ぐわけもなし
雨音に枕安堵す寒の朝

平成二十六年

考えて今宵の鍋を定めけり
陽だまりや居ても目立たぬ老いの苑
晩秋に産業医説く老病死
譲られて夏の吊革揺れにけり
質草のみどりは淡し初鰹
春の月なにに怯えて寝付かれず
まっつぐに舗装の継ぎ目草の筋
春雨や十色の百の傘交じり
重ね着や更に重ねて二重足袋
官を辞し大黒様に初詣

徒し世のお蔭参りか南瓜祭
柿仰ぐ色鮮やかで喰えぬ奴
秋深し蜜柑の甘くなりにけり
天高く輪乗りの小馬の目の回る
生き方を猫に教わる秋日和
BBC耳順はぬ夜長かな
やや足りず二割負担で古希の秋
世につれて的屋老ひけり秋祭り

令和四年古希

夕焼やエンドロールは短めに
送り火や斜めに構え四回目
蜘蛛の子を逃がす爺の下心
猛暑日やハテナハテナとミミズの死
心配の種を飛ばして西瓜食ふ
二回戦出来た半分夏終わる
春愁やドーパミンよりセロトニン
見納めでいいと思いつ見るさくら
転がつて虚空をつかみ山笑う
長閑さやそちらの雪の気にかかり
ニュースなきラジオに合わせ冬籠り
願うこと生死直結古稀の春

令和三年

一年の計の結果のただ寒し
小吏なるロバにも御用納めかな
金給わり銭を遣いて年詰まる
点滴を逆流させて神の留守
秋の暮時が許さぬ小商い
だんだんと暗く成り行く敬老日
台風や土手を信じて水の底
自己嫌悪影もつくらず木下闇
生物は蔓延りたがり黴生える
リハビリテーション病院で予約を済ませ五月尽
荷風忌やお一人様として帰心
啄木忌始発少なし上野駅
長閑さや下校のチャリの横並び
大寒や野菜売場に無季の彩
枯れ枝に何か訳ある葉が二枚
御言葉に迷う古羊冬帽子
保育士の目も遊ばせて冬日
添え書きのなき賀状きて三四枚
手短に手短願う初詣

令和二年

現世に強き妻いて懐手
在宅のたまに出ていく歳の暮
血圧の上がる寒さとなりにけり
天高く寺の掲示や出来不出来
読書妻君の偏差値十高し
鶏頭に脳みる脳の朧かな
鳴く虫や泣いて出てきた道化の世
灼けかたの違ふ野球部蹴球部
世の中は回つているか今年米
願い事眠るが如く星今宵
給付金打ち出して見る半夏生
死たがる句ばかり詠みて桜桃忌
起承転結生老病死梅雨深し
新緑や半径二キロに棲息す
肉マンを二つ列べて四月馬鹿
小春日や足許からの薄き影
仕事なく仕事初めもなかりけり
初夢の好色にして恙無し
あの世などあつてたまるか仏の座

令和元年

桜島見しが今年の一大事
ボロ市や賢母膝つき品定め
舞い降りて一日二日は彩落ち葉
影像を読み解く医師やそぞろ寒
立冬や寝起きの悪き妻である
黄落や散りぎわばかり見るさくら
電飾を取り付く小枝あやまたず
初孫の祝い返しや芋と柿
担ぎ手の腹の出ている秋祭り

平成三十一年

子のブログ見て就職を確かむる
憂いなく今が死に時ちゃんちゃんこ
母親は捨てられる女春寒し
鍋焼きや舌で転がすトッピング
菜の花や喰われる前に咲きにけり
本年は酒で潰さぬ暇潰し
積み上げて取り崩さずに寒卵

平成三十年

転職も二度目は慣れて晦日そば
冬来たりなば春とはシェリーかな
歳晩や旧社に掛ける里心
手探りのボタンダウンや穴惑い
年金手帳夫婦で捜す五月闇
ハナミズキ姉妹の茶話の余り菓子
初物や懐具合の冷奴
いいことは探せば出る種袋
ハンコウも一つに纏め老いの春
噴水や枯れ野の末に勃起せり
寒々と尿の色に黄泉の国
営業の出ていく巷に雪が降る
生足も凍る掟か女子高生
匿まわる団地の犬の息白し
働いてあと五年はと年初め

平成二十九年

働けて減額支給や大手締め
着膨れや乗らんと体を斜に構え
追い焚きをするならしなよしてごらん
幸せと思えと言わる椿カフェ
しぐるるやいけるとこまで多作多捨
一キロを十個に分けし神無月
骨軽し壺は重たし秋の空
秋風や孫たちの居て家族葬
死なざれば受給資格や小鳥来る
蝉啼くやハウスバイバイ判二つ
売家の穂を垂る草をむしりけり
団地とは函と内箱桜散る
見下ろせば団地に隣る桜道
春愁や覚悟を迫る顔の紙魚
懐の肉まん食わぬ梶思う
着膨れて彼方に弛みし靴の紐
受験子やちからになれぬ父連れて
コーラクや今年は煮込みと二合まで
あつけなき転結願い初参り

平成二十八年

冬の路地荷風になつたつもり酒
雪だるま近所にいまだ子がいたり
案外の実を結びけり庭みかん
柏そごついに閉店九月果つ
マジックの消えてラジオの変声
紅顔の少年さんまほろ苦し
細胞や小春日和のビラ配り
開いたと君白梅を指しにけり
色夢におもちゃ手すさぶ寒の床
一駅で桃黒となり寒夕焼

平成二十七年

秋の暮文句は言えぬ五人扶持
遠雷や帰りを急ぐわけもなし
雨音に枕安堵す寒の朝

平成二十六年

考えて今宵の鍋を定めけり
陽だまりや居ても目立たぬ老いの苑
晩秋に産業医説く老病死
譲られて夏の吊革揺れにけり
質草のみどりは淡し初鰹
春の月なにに怯えて寝付かれず
まっつぐに舗装の継ぎ目草の筋
春雨や十色の百の傘交じり
重ね着や更に重ねて二重足袋
官を辞し大黒様に初詣

徒し世のお蔭参りか南瓜祭
柿仰ぐ色鮮やかで喰えぬ奴
秋深し蜜柑の甘くなりにけり
天高く輪乗りの小馬の目の回る
生き方を猫に教わる秋日和
BBC耳順はぬ夜長かな
やや足りず二割負担で古希の秋
世につれて的屋老ひけり秋祭り

令和四年古希

夕焼やエンドロールは短めに
送り火や斜めに構え四回目
蜘蛛の子を逃がす爺の下心
猛暑日やハテナハテナとミミズの死
心配の種を飛ばして西瓜食ふ
二回戦出来た半分夏終わる
春愁やドーパミンよりセロトニン
見納めでいいと思いつ見るさくら
転がつて虚空をつかみ山笑う
長閑さやそちらの雪の気にかかり
ニュースなきラジオに合わせ冬籠り
願うこと生死直結古稀の春

令和三年

一年の計の結果のただ寒し
小吏なるロバにも御用納めかな
金給わり銭を遣いて年詰まる
点滴を逆流させて神の留守
秋の暮時が許さぬ小商い
だんだんと暗く成り行く敬老日
台風や土手を信じて水の底
自己嫌悪影もつくらず木下闇
生物は蔓延りたがり黴生える
リハビリテーション病院で予約を済ませ五月尽
荷風忌やお一人様として帰心
啄木忌始発少なし上野駅
長閑さや下校のチャリの横並び
大寒や野菜売場に無季の彩
枯れ枝に何か訳ある葉が二枚
御言葉に迷う古羊冬帽子
保育士の目も遊ばせて冬日
添え書きのなき賀状きて三四枚
手短に手短願う初詣

令和二年

現世に強き妻いて懐手
在宅のたまに出ていく歳の暮
血圧の上がる寒さとなりにけり
天高く寺の掲示や出来不出来
読書妻君の偏差値十高し
鶏頭に脳みる脳の朧かな
鳴く虫や泣いて出てきた道化の世
灼けかたの違ふ野球部蹴球部
世の中は回つているか今年米
願い事眠るが如く星今宵
給付金打ち出して見る半夏生
死たがる句ばかり詠みて桜桃忌
起承転結生老病死梅雨深し
新緑や半径二キロに棲息す
肉マンを二つ列べて四月馬鹿
小春日や足許からの薄き影
仕事なく仕事初めもなかりけり
初夢の好色にして恙無し
あの世などあつてたまるか仏の座

令和元年

桜島見しが今年の一大事
ボロ市や賢母膝つき品定め
舞い降りて一日二日は彩落ち葉
影像を読み解く医師やそぞろ寒
立冬や寝起きの悪き妻である
黄落や散りぎわばかり見るさくら
電飾を取り付く小枝あやまたず
初孫の祝い返しや芋と柿
担ぎ手の腹の出ている秋祭り

平成三十一年

子のブログ見て就職を確かむる
憂いなく今が死に時ちゃんちゃんこ
母親は捨てられる女春寒し
鍋焼きや舌で転がすトッピング
菜の花や喰われる前に咲きにけり
本年は酒で潰さぬ暇潰し
積み上げて取り崩さずに寒卵

平成三十年

転職も二度目は慣れて晦日そば
冬来たりなば春とはシェリーかな
歳晩や旧社に掛ける里心
手探りのボタンダウンや穴惑い
年金手帳夫婦で捜す五月闇
ハナミズキ姉妹の茶話の余り菓子
初物や懐具合の冷奴
いいことは探せば出る種袋
ハンコウも一つに纏め老いの春
噴水や枯れ野の末に勃起せり
寒々と尿の色に黄泉の国
営業の出ていく巷に雪が降る
生足も凍る掟か女子高生
匿まわる団地の犬の息白し
働いてあと五年はと年初め

平成二十九年

働けて減額支給や大手締め
着膨れや乗らんと体を斜に構え
追い焚きをするならしなよしてごらん
幸せと思えと言わる椿カフェ
しぐるるやいけるとこまで多作多捨
一キロを十個に分けし神無月
骨軽し壺は重たし秋の空
秋風や孫たちの居て家族葬
死なざれば受給資格や小鳥来る
蝉啼くやハウスバイバイ判二つ
売家の穂を垂る草をむしりけり
団地とは函と内箱桜散る
見下ろせば団地に隣る桜道
春愁や覚悟を迫る顔の紙魚
懐の肉まん食わぬ梶思う
着膨れて彼方に弛みし靴の紐
受験子やちからになれぬ父連れて
コーラクや今年は煮込みと二合まで
あつけなき転結願い初参り

平成二十八年

冬の路地荷風になつたつもり酒
雪だるま近所にいまだ子がいたり
案外の実を結びけり庭みかん
柏そごついに閉店九月果つ
マジックの消えてラジオの変声
紅顔の少年さんまほろ苦し
細胞や小春日和のビラ配り
開いたと君白梅を指しにけり
色夢におもちゃ手すさぶ寒の床
一駅で桃黒となり寒夕焼

平成二十七年

秋の暮文句は言えぬ五人扶持
遠雷や帰りを急ぐわけもなし
雨音に枕安堵す寒の朝

平成二十六年

考えて今宵の鍋を定めけり
陽だまりや居ても目立たぬ老いの苑
晩秋に産業医説く老病死
譲られて夏の吊革揺れにけり
質草のみどりは淡し初鰹
春の月なにに怯えて寝付かれず
まっつぐに舗装の継ぎ目草の筋
春雨や十色の百の傘交じり
重ね着や更に重ねて二重足袋
官を辞し大黒様に初詣