(巻九)初旅や反対側の窓に富士(中根武郎)

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12月16日水曜日

年を越せるとか越せないとかは落語の世界ではよく出てくる噺であるが、有楽町ビルヂィング の洋服店がこの年の瀬に店仕舞いするようである。

頭たれ耐えてをりしが椿落つ(モーレンカンプふゆこ)

背広も扱っていたようではあるが、店頭にはお洒落着であるジャケット、ブレザー、ブルゾンが専ら陳列してあった。お値段も中以下で最も値の張るブレザーでも五万円で、二万円代を厚く揃えていた。サラリーマンに手の届く範囲の品を商う店であったと言える。

変わらざるものは飽られ水中花(山下由理子)

ブランド高級品でもなく、量販店の安売り品でもなく、昼休みにふらっとやって来るこの界隈に勤めている人がマーケットであったのだろう。
この店を入れて、このビルの一階のメイン通路には、洋装店、薬局、眼鏡店がある。かつては日比谷丸の内サラリーマンを客として栄華を誇った有名ビルの商店街であるが、団塊サラリーマンが去った今、朽ちていくのか。

街道も今は裏路地冬椿(酒井湧水)