(巻九)短夜の看とり給ふも縁かな(石橋秀野)

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12月23日水曜日

コンビニでは成人向けDVD付きの雑誌を売っている。
大抵の店ではこの種の雑誌を、目立たぬよう、雑誌コーナーの一番奥に置いて買う人の心理に配慮している。その一方で、店はこのコーナーに上手く鏡を配置し死角にはしていない。

虫売の黙つて虫を鳴かせけり(明隅礼子)

コーナーには、若妻ものから大年増まで年で分けられ、強調しているパーツや趣向を踏まえて編集された20種類ほどの雑誌が揃えてある。値段は700円から1000円までと言ったところだ。

それぞれの表紙は扇情的である。AV界のスター女優を据えて、直接的な表現の見出しと「DVD4時間、長尺もの6本!」という量的な売りでアピールしているが、中を覗くことはできない。二ヶ所に粘着力の強いシールが貼られ頁を捲れないようにしてある。

声ほどは飛ばぬ女優の追難豆(渡辺峰山)

DVDに収録されている画像は既に公開販売されたAV作品の一部を寄せ集めたものである。海賊版コピーではないだろうが5年も10年も前のポルノの切れ端だから、ただ同然の制作費であろう。
五、六分くらいダイジェスト版が主であるが、何本かは長尺と言われる30分を超える作品を完全な形で入れてある。

不健全図書を世に出しあたたかし(松本てふこ)

その雑誌コーナーで日常生活の猥褻を得意とする「FAプロ」の作品を集めたDVDを見つけた。
このコンビニはたまたま立ち寄った店なので、二度と来ることはない。レジにいるのはおばちゃんである。買いやすい環境だ。
万引きと間違われないように捧げ持ってレジに向かい、表紙を上にして、サンドイッチを買うようにそれをカウンターに置いた。
おばちゃんは弁当でも売るようにバーコードを読み取り、金を受け取り、雑誌をビニール袋に入れ、つり銭といっしょに渡してくれた。
私は袋を受け取ると店を出て、すぐ外に置いてあるゴミ箱の前に立った。
立読み防止シールをひっぺがし、紙封筒に入れセンターホールドに挟んであるDVDを引きちぎって上衣ポケットに押し込み、雑誌をゴミ箱に捨てて、その場を去った。

裁かるる悪にはあらねどそぞろ寒む(富安風生)