2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

(巻十二)立読抜盗句歌集

マネキンを下着で立たせ夏に入る(丸井巴水) 菜の花や月は東に日は西に(蕪村) 筍のまことに無骨な荷が着きぬ(山田弘子) 街角の風を売るなり風車(三好達治) 柿ひとつ空の遠きに堪えむとす(石坂洋次郎) 中吊りに求ム旅人夏休み(松枝真理子) 覗く目を逆に覗きし…

(巻十二)郭公なくや五月のあやめ草あやめも知らぬ戀もするかな

11月4日金曜日 巻十二も此にて完結となりました。続いて一挙掲載いたします。 今日はJRがぐたぐたに乱れ、帰りの電車も有楽町駅でホームボタンが押されて止まってしまった。幸い3分くらいで発車してくれたが、今度は遅れ挽回のためか爆走運転である。駅…

(巻十二)口下手で思ひのたけを文夜長(嶋田摩耶子)

11月3日木曜日 昨日は昼休みに神保町まで足を伸ばして古本祭を覗いてみた。新橋駅前の市と違い古本というよりは古書のようで出店の板に括られて並んでいる書でも結構な値がついている。 足袋の値に驚くことも現世(このよ)かな(尾崎迷堂) 文庫本で出会いが…

(巻十二)是がまあつひの栖か雪五尺(一茶)

11月2日水曜日 季節が変わったことを体はちゃんと受け止める。私の場合は水分の摂取量が変わる。内臓のこともあり昼間1リットル飲むようにしているが、春夏秋と特に強く意識せずとも飲めていた。だがここに来て帰り際にペットボトルに残っていることがあ…

(巻十二)ビヤガーデン話題貧しき男等よ(吉田耕史)

11月1日火曜日 朝、外回りが新橋で時間調整のため1分停まった。向かいの京浜東北線南行は2分間の調整停車とアナウンスされると、南行から外回りへどっと人が移った。朝の1分は斯様なまでに重い時間なのか。 いそぐ蟻なまける蟻とすれちがふ(吉田未灰) …

『福翁自伝』巻末「解題」小泉信三

『福翁自伝』が自伝文学の傑作であるということについては、すでに今日定論があるように見える。一つの語るに値する生涯が、自らその生涯を生きた、すぐれた語り手によって語られるという点で、ここに滅多にない条件が揃っている。福沢がそこに語るところは…

(巻十二)北窓を塞ぎ海との情隔つ(仙道房志)

10月31日月曜日 『福翁自伝』は読んだことにした。巻末にある小泉信三氏の「解題」を書写したのでご覧に供する。 明日か明後日、神田古本祭に出かけて特養まで連れていけるような文庫本を探すつもりであるが、それまでは水木しげる氏の『極楽に行く人地…