(巻十一)孤高とは雨中の噴水かと思ふ(千田百里)

7月5日火曜日

車内広告で気になる役者さんがいました。米倉涼子がの宝くじの宣伝ビデオでは珈琲店のマスターを演じ、名刺のコマーシャルでは部長を演じていた強面の役者さんで、“三の線”も上手い方です。
今朝山手線のドアの広告でお名前が分かりました。“松重豊”さんという方でした。

強面の人との対話石蕗の花(沼尾紫朗)

悪役というか、怖い顔の役者さんでは天知茂さんや成田三樹夫を思い出しますが、松重さんもいい面構えです。残念なのは松重さんの面相を必要とする映画があまり無いことでしょうか。ご時世ですから、三の線で稼いでください。

咳こんでいいたいことのあふれけり(成田三樹夫)

昨晩、月曜日のNHKラジオ第二放送のラジオアーカイブスでは小津安二郎ゆかりの俳優シリーズと言うことで笠智衆さんが登場されました。“東京物語”では48歳で72歳の老け役をこなしたとのことです。
小津監督を尊敬していると語る一方で、俳優の自発性は許さず、ガメラワークから小道具の選択まで監督が全てを仕切っていたと、ややご不満のトーンで語っていらっしゃいました。

一人身の心安さよ年の暮(小津安二郎)

笠智衆さんの小津作品は“秋刀魚の味”を見ておりますが、このときに岩下志麻さんという私の生涯の憧れの女性を知りました。
笠さんはその後“寅さん”で拝見しておりましたが、強く印象に残ったのは東宝三船敏郎が演じた“無法松”のなかで笠さんが演じた土地の大立て者です。よぼよぼとした老け役ではなく、和服をぴしっとお召しになりきびきびとした大親分でした。

冷奴つまらぬ賭に勝にけり(中村伸郎)

中村さんも小津組でした。