(巻八)弓なりに橋さえ耐えているものをどうしようもなく熟(みの)りゆく性(永田和宏)

そんな時代もあったね!
童貞を捨てたのは二十六歳だ。遊びに行かなかったので、幼なじみの中では遅い方であった。

童貞や根岸の里のゆびずもう(仁平勝)

相手は玄人ではなかったが悪女と善女が同居し、どちらになるかはその日の賽の目次第という年上の美人だった。

悪女かも知れず苺の紅つぶす(三好潤子)

ぬかづけばわれも善女や仏生会(杉田久女)

遅まきながら、女性を知ると、奇妙なことに、一生に一度しかない、「モテ期」が訪れた。

背を割りて服脱ぎおとす稲光り(坂間晴子)

誇張すれば、とっかえひっかえでお付き合いした。

朝貌や惚れた女も二三日(夏目漱石)

「昼間菩薩で夜は女夜叉」というような女性も体験したが、当然虚しくもなる。

をみなとはかかるものかと春の闇(日野草城)

そんなところに、細君が現れてくれて、お互いに「貞節を守り、末はいい茶飲み友達になる。」という約束をして一緒になった。

石二つ相寄るごとし秋のくれ(原石てい)

お行儀の良い、安定感のある幸せを感じている。

女夫仲いつしか淡し古茶いるる(松本たかし)