(巻十六)月をこそながめなれしか星の夜の深きあはれをこよひ知りぬる(建礼門院右京大夫)

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10月19日木曜日

ドックの受付は9時からなのでゆっくりと8時ころ家を出てもよいのだが、いつも通りに6時15分に出た。
いつも通りに電気ビル裏のプロントに入ったが、今朝はお茶だけにするので、レジのアキ子さんに“今朝はお茶だけネ!”と一声かけてから席を取った。“健康診断ですか?”とお察しのよいお返事をいただく。

9時にインペリアル・タワーにある診療所の受付に到着し、問診票とサンプルを提出する。検査着に着替え、48番のワッペンを腕に着けて待機した。
IT機器の携行は禁止なので、ポケット版の句帳と鉛筆を用意しておいた。関連する句や歌の紐付けをして待つのがいつものことである。
先ず、眼の検査から始まった。がちゃ眼である。たが、このがちゃ眼のお陰で眼鏡が要らない。近くは左眼が効き、遠くは右眼が効く。
続いて伸長体重胴回りの測定である。靴下を脱いでの測定なのでこれに手間取った。体が固くなっている。

大寒の靴下座らねば履けぬ(坂田直彦)

更に血圧と聴力に至る。血圧は自分の平常値をかなり上回るが、ここではいつものことである。聴力は「許容範囲内です。」とちょっと嫌な言い方をされた。この辺がインペリアルである。町医者の看護師の“高齢者”への言い回しではない!

測るたびちがふ血圧小鳥来る(都丸美陽子)

そして、鬼門のエコーである。予め、尿管と腎臓のことを伝え、定期的に診察を受けていることを検査士のおばさんに告げた。そうしておかないと、最後の医師との面談で、明日死ぬようなことを言われるのだ!

啓蟄やエコーで探る腹の虫(石塚寿子)

続いて、心電図と肺活量である。煙草を吸い続けているが、「正常です。」とのことだった。“許容範囲内です。”より“正常です。”の方が嬉しい。
サンプリングの最後は採血であった。
〆に女医さんとの面談であったが、ときめかないタイプの女医さんであった。「今年の結果でも、潜血があったら、ちゃんと検査された方がいいですよ。」と想定内のアドバイスである。一度札付きになると、刺青は消えないなあ!

メメントモリ

そして〆が終ったあとに、胸部エックス線とバリウムである。バリウムカップはだいぶ小さくなったが、それでも後が面倒である。下剤は追加を頂いた。
俎に載せられて、“三回転がれ、右に傾け、左に傾け、逆さにするからしっかり手摺を握れ!”と指示が出る。健康な老人でなければとても従えない動作である!

表裏見られ花烏賊捌かるる(じはい進太)

およそ一時間半のサンプル採取でドックは終った。ロッカーの鍵を返却し、隣りの帝国ホテルの一階にある“パークサイド・ダイナー”という“場所”でのお食事券を
受け取った。毎年ドックを受けて、お食事券を戴いているが、まだ行って食べたことがなかった。これが最後になるであろうと思い、地下の通路を歩いて 本館に渡り“パークサイド・ダイナー”に入ってみた。
レストランではなく、コーヒーショップと言った“場所”である。診療所で頂いた青いお食事券を受付でヒラヒラさせると、「お一人様ですか、カウンターで宜しければすぐに案内いたします。」と言うので、話に乗った。
カウンターに座りビニール傘をバサバサさせていたら、「お預かりいたしましょうか?」と言うので話に乗った。
青色お食事券の所持者は四種類の料理、すなわち、ミックスサンド、パンケーキ、野菜カレー、スパゲッティー・ミートソース、から一品である。これに珈琲か紅茶が付く。
スパゲッティー・ミートソースを選んで、下剤がわりにビールを注文した。大きめなグラスビールは千二百円であった!

極東の小帝国の豆御飯(上野遊馬)

ドックは疲れた。