2020-01-01から1年間の記事一覧

「『行基式目』とアーネスト・サトウ - 林望」文春文庫 巻頭随筆6 から

「『行基式目』とアーネスト・サトウ - 林望」文春文庫 巻頭随筆6 から 『行基式目』というちっぽけな本がある。いったいこの書名を、日本中でどれほどの人が知っていることだろう。たかだか二、三ページほどの薄っぺらい小冊子で、伝本も幾らも残っていな…

(巻二十七)降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか(橘諸兄)

(巻二十七)降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか(橘諸兄) 12月4日金曜日 朝晩の血圧測定を9月15日に始めてから3ヶ月弱のところで電池が切れた。今朝、測っていたら腕に巻いている帯の空気圧が上がらなくなり電池がフラットになっている…

号外

今日借りてきた『浮気人類進化論-竹内久美子』を捲っておりましたところ、先人の素晴らしい校正に出会いました。嬉しくなって号外を出す次第です。「当を得た」もありか?

「やまのて線 - 柳井乃武夫」文春文庫 巻頭随筆1から

「やまのて線 - 柳井乃武夫」文春文庫 巻頭随筆1から 麹町六丁目に心法寺というお寺がある。その玄関前の植込みの中に鐘がひっそりと置かれている。戦争中、供出のため鐘楼からおろしたところで戦災に遭い、いくらか火はかぶったがそのまま終戦を迎えたの…

(巻二十七)一事をばはげむべしとぞ読み始む(矢津羨魚)

(巻二十七)一事をばはげむべしとぞ読み始む(矢津羨魚) 12月3日木曜日 散歩: お寺さまのお告げがどうも冴えない!だからどうしたというのだ? 散歩は駅前へと歩いた。ただ寒いだけである。灰皿が駅前にしかないからそこまで歩くしかないのだ。往復歩くか…

2/2「百寺の旅 千所の旅 - 五木寛之」ベスト・エッセイ2006から

2/2「百寺の旅 千所の旅 - 五木寛之」ベスト・エッセイ2006から 寺伝、というのは、おおむね後世につくられた物語りのようなもので、かならずしも歴史ではない。歴史ではないが、まったくのフィクションでもない。物語りに化構された真実というものが、…

(巻二十七)からすめは此の里過ぎよほととぎす(西鶴)

(巻二十七)からすめは此の里過ぎよほととぎす(西鶴) 12月2日水曜日 図書館から貸出し可能との連絡が入ったので雨の降り出さないうちにと、午前中に駅前の図書サービス・カウンターへ出かけた。襟巻きをした人や毛糸の帽子を被った人、ダウンを着込んだ人…

1/2「百寺の旅 千所の旅 - 五木寛之」ベスト・エッセイ2006から

1/2「百寺の旅 千所の旅 - 五木寛之」ベスト・エッセイ2006から 七十歳の春から、百の寺をまわり歩く旅をはじめた。ひと月に四寺から五寺を訪れて、いまようやく九十寺に達しようというところである。 仕事がらみの旅ではあるが、それだけではない。か…

(巻二十七)明易や雨の降りたる跡ありて(木村定生)

(巻二十七)明易や雨の降りたる跡ありて(木村定生) 12月1日火曜日 朝方やや寒く目を覚ました。予て足元に用意の掛け布団二枚目を拡げて凌いだが寝具はこれであとはない。 早ばやと重ね布団や露の宿(瀬川みよ子) 昼飯に柿をむきました。芋も温めて出しまし…

昨日の訂正

昨日の訂正 ★昨日、以下のことを書き 『“owl walk”(と聞こえる)』と書きましたが、この番組の20分36秒あたりで“awe”とスペルが述べられておりました。awe walkで検索しますとこれがなんであるかの解説が出てきましたので、今度は間違いないとおもいます…

「葬儀学習会!? - 日比野敏」文春文庫 10年版ベスト・エッセイ集 から

「葬儀学習会!? - 日比野敏」文春文庫 10年版ベスト・エッセイ集 から 葬儀学習会に行ってみようかと家内に言われて「エッ?」と思った。お墓の販売や互助会の勧誘などはたまに電話が掛かってくるけど、このごろは葬儀そのものまでもが「営業活動の対象…

(巻二十七)鷹鳩と化して男もピアスする(漁俊久)

(巻二十七)鷹鳩と化して男もピアスする(漁俊久) 11月30日月曜日 細君は午前中歯医者へ出かけて、私は賞味期限が迫る災害用非常食で昼飯とした。何しろ3月からラーメン屋に入っていないので即席チキンラーメンでも嬉しく美味しく頂ける。早く餃子で熱燗…

「趣味 - 室井滋」福武文庫 ブキミな人びと から

「趣味 - 室井滋」福武文庫 ブキミな人びと から 私は大のタクシー好きです。 お金が無く、仕方なしに駅を目指してトボトボ歩いている時でも、目尻でタクシーを発見してしまうや否や、ついつい路上にかけ出し、映画『グロリア』のG・ローランズ張りに、高々…

(巻二十七)日盛りの一個の鞄軽からず(八木實)

(巻二十七)日盛りの一個の鞄軽からず(八木實) 11月29日日曜日 細君が生協に出かけて生鮮物を提げてきた。その買い物のご説明を伺うに、秋刀魚は三陸沖で二尾で298円だそうだ。鹿児島産の黒豚が四割引きだそうだ。鶏肉は青森産で炊き合わせる大根は三…

「庭の生き物たち - 和田貞男」93年度新鋭随筆家傑作撰から

「庭の生き物たち - 和田貞男」93年度新鋭随筆家傑作撰から 私が現在の場所に移り住んだのは、約三十年前のことである。 東京郊外の私鉄の駅から、歩いて十五分ほどの新興住宅地の中にある。駅付近を過ぎると、我が家までの中間は畑地が主で、民家はまば…

(巻二十七)この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも我はなりなむ(大伴旅人)

(巻二十七)この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも我はなりなむ(大伴旅人) 11月28日土曜日 毛布など干そうとベランダに出たが風が強く木の幹まで揺れていたので止めた。恐らく風速8メートルは超えているだろうから、これは木枯しだ。 木枯らしにブ…

WATERFRONT NEWS

WATERFRONT NEWS 関税局―通関士試験結果発表 11月27日 Customs Specialist Examination results. Customs and Tariff Bureau announces the examination passers 2020 exam ,which was carried out Oct 4. 1140 out of 6745 test takers, 16.9%, succeeded. …

4/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上)

4/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上) 江戸城の濠はけだし水の美の冠たるもの。しかしこの事は叙述の筆を以てするよりもむしろ絵画の技[ぎ]を以てするに如[し]くはない。それ故私は唯代官町の蓮池御門、三宅坂下の桜田御門、九段坂下の牛…

(巻二十七)薄雲は月のうしろを通りけり(正岡子規)

(巻二十七)薄雲は月のうしろを通りけり(正岡子規) 11月27日金曜日 効果があるのかないのか分からないが、ベランダにキンチョールを散布して亀虫などの虫除けにしている。その殺虫剤の朝夕の散布も冬季休止にすると細君のお達しが出た。 細君が生協の買い…

3/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上)

3/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上) 以上河流[かりゅう]と運河の外なお東京の水の美にに関しては処々の下水が落合って次第に川の如き流れをなす溝川[みぞかわ]の光景を尋ねて見なければならない。東京の溝川には折々可笑しいほど事実と…

(巻ニ十七)いまどきのはやり唄聴くそぞろ寒(藤平寂信)

(巻ニ十七)いまどきのはやり唄聴くそぞろ寒(藤平寂信) 11月26日木曜日 今時の流行り唄も、流行り病にもかかわり合いを持たないように致しております。私にとっての最新の流行り唄はスピッツのロビンソンでございますよ。過日、細君が今年の紅白の出場予…

2/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上)

2/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上) 私が十五、六歳の頃であった。永代橋の河下[かわしも]には旧幕府の軍艦が一艘商船学校の練習船として立腐れのままに繋がれていた時分、同級の中学生といつものように浅草橋の船宿から小舟を借りてこの…

(巻二十七)みみず鳴く日記はいつか懺悔録(上田五千石)

(巻二十七)みみず鳴く日記はいつか懺悔録(上田五千石) 11月25日水曜日 日記と言えばここのところ数日、 「「老い」の見立て - 川本三郎」岩波現代文庫 荷風と東京(上)-『断腸亭日乗』私註 から を読んでいる。 この 「「老い」の見立て」では実際の年…

1/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上)

1/4「水・渡船 - 永井荷風」岩波文庫 荷風随筆集(上) 仏蘭西人エミル・マンユの著書『都市美論』の興味ある事は既にわが随筆『大窪だより』の中に述べて置いた。エミル・マンユは都市に対する水の美を論ずる一章において、広く世界各国の都市とその河流及び…

(巻二十七)梅雨の月傘をさす人ささぬ人(川崎展宏)

(巻二十七)梅雨の月傘をさす人ささぬ人(川崎展宏) 11月24日火曜日 昨日より8度下がって12月中旬の気温だそうだ。そんな今日、予定通りガス器具の安全点検でガス会社の方がお見えになった。ガス点検なりすまし強盗は二人組が多いようだが、本物は一人…

「ふたりで老いる楽しさ - 小田島雄志」ベスト・エッセイ2007

ひとりで老いるのはさびしいことだろう。そう思う。さいわいぼくは、同年生まれの妻といっしょに老いてきたし、これからももっと老いていくだろう。もちろん今まで、老いゆえにとまどうこともあったし、いらだつこともあった。だが七十代に入ってからは、老…

(巻二十七)焼さんま得手のものなる箸捌き(高澤良一)

(巻二十七)焼さんま得手のものなる箸捌き(高澤良一) 11月23日月曜日 本日も午前は晴天なり。が、昼を過ぎたあたりから雲が広がった。見れば桜木もすっかり葉を落とした。 掃き寄する桜落ち葉の香り立ち今日は午後より雨との予報(大下一真) 散歩: 駅前へ…

「『鍵-谷崎潤一郎』の解説 - 山本健吉」新潮文庫 鍵・瘋癲老人日記 から

「『鍵-谷崎潤一郎』の解説 - 山本健吉」新潮文庫 鍵・瘋癲老人日記 から 一 『鍵』の第一回は、昭和三十一年一月の『中央公論』誌上に掲載された。その後、三カ月中絶して、第二回は同誌五月号に、第一回分を再録併載して発表され、以後十二月号まで一回…

(巻二十七)物知の蘊蓄を聴く屏風かな(野中亮介)

(巻二十七)物知の蘊蓄を聴く屏風かな(野中亮介) 11月22日日曜日 秋晴れで無風で気温は20度近くまで上がりました。 今日の朝日俳壇から 村じゆうを巡りて秋を惜しみけり(北村純一) を書き留めたが、私は町内を一巡りして秋惜むであります。 日曜日の午…

「光の鱗 - 西村寿行」文春文庫 巻頭随筆3 から

「光の鱗 - 西村寿行」文春文庫 巻頭随筆3 から 昔、漁夫をしていた頃があった。 家が瀬戸内海で小さな網元をやっていた。敗戦後のことである。生家は名もないような島にあった。海のオデキのようにポツンと突き出た島だ。 島の段々畑の一面に桃の木の林が…